夏の訪れを感じる7月。後半には夏休みも始まり各地で花火大会やお祭りなど楽しいイベントが多い月でもありますね。7月の行事や二十四節気、季語など7月にまつわることをまとめてご紹介いたします。
季節を少し意識をしてみると、今まで気にしていなかった風景に目が止まるようになったりと日常生活が更に豊かなものになるはずです。日本の伝統的な季節感を知ることで、生活の中にも新たな彩りを加えられるかもしれませんよ。
文月(ふみづき):7月の和名
旧暦では月の呼び方に和風月名(わふうげつめい)を利用していました。現在でも利用することがあるので知っている方がほとんどかと思います。
7月の和風月名は文月(ふみつき・ふづき)です。この呼び名の由来については諸説ありますが、有力なものは以下の説です。
- 七夕に関連する説:文月にはおなじみ七夕の行事がありますね。短冊に願い事や歌などの文字を書き書道の上達を祈るという意味合いもあり、それに因んで文披月(ふみひらきづき)と呼ばれ、それが転じて文月と呼ばれるようになったという説が有力です。
- 農耕に関連する説:稲穂が膨らむ月であることから、「含月」(ふくみづき)や「穂見月」(ほみづき)と呼ばれていたという説もあります。これらが転じて「文月」になったという考え方です。
これらの説は、いずれも日本の季節や文化と深く結びついています。「文月」という名称が、単なる月の呼び名以上に、日本人の季節感や自然観を反映していることがわかります。
年中行事
夏の暑さが本格化してくる月。7月には夏を感じさせる年中行事が様々あります。どれもなじみの行事かと思いますが、改めて知ってみると面白いですよ。
七夕
七夕と言えば織姫と彦星が1年に一度出会う日としておなじみですね。笹に願い事を書いた短冊を吊るした経験が誰にでもあるかと思います。
織姫と彦星の話
織姫の父、天帝は娘の結婚相手として彦星を引き合わせ二人はめでたく夫婦となりました。しかし結婚してからというもの、二人は仲睦まじくするばかりで仕事をしなくなります。
これに怒った天帝は天の川を隔てて二人を離れ離れにし、七夕の夜に限って二人が再会することを許しました。天帝の命を受けたカササギの翼にのって天の川を渡り、二人は年に一度の逢瀬をするようになりました。
織姫星とされるベガと彦星座とされるアルタイル。旧暦7月7日はこの二つの星が天の川をはさんで最も光り輝いているように見えることから、中国ではこの日をベガとアルタイル、つまり織姫と彦星が一年に一度巡り合う日日と考え、七夕のお話が生まれました。
七夕の元は中国の乞巧奠(きこうでん)という行事が元になっています。機織りの上手な織姫にあやかって機織りや裁縫が上達するようにお祈りをする風習から、機織りに限らず書道や芸事などの上達を願うようになっていきました。
七夕が日本に伝わってきたのは平安時代のことです。初めは宮中行事として行われていましたが、江戸時代になり、やがて庶民へと広がっていきました。庶民が短冊を吊るすようになったのも江戸時代からのことです。寺子屋で学んだり習い事をする子どもが増えた時代でもあり、その上達を星に願うようになりました。
そのため、七夕の願い事には単に欲しいものなどを願うのではなく、夢の達成や実力アップなどの願いごとをするのが良いとされています。現代においても、この伝統は受け継がれており、多くの人々が自己啓発や技能向上を願って短冊を飾ります。
海の日
海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う国民の祝日です。明治9年(1876年)に明治天皇が「明治丸」で東北地方を巡幸され、横浜港に帰着されたことを記念して、その到着日(7月20日)を「海の記念日」としたのが始まりです。
国民の祝日となったのは1996年(平成8年)からで、「海の記念日」から「海の日」と名前を変え、今日まで祝日として続いています。2002年まで海の日は7月20日でしたが、ハッピーマンデー制度により2003年(平成15年)には7月の第3月曜日に変更されました。
この日には、全国各地で海に関連したイベントが開催され、海の安全や環境保護について考える機会にもなっています。また、多くの人々がビーチやマリンスポーツを楽しむなど、夏のレジャーシーズンの幕開けとしても親しまれています。
土用の丑の日
うなぎを食べると夏バテをしない日として知られている土用の丑の日。この習慣の由来については諸説ありますが、最も有名なのは江戸時代の逸話です。
うなぎが売れないと相談された学者の平賀源内が、「本日丑の日」という貼り紙を店先に貼ることを提案したといいます。当時、丑の日に「う」から始まる食べ物を食べると夏バテしないという風習があり、この提案によってうなぎ屋は大繁盛しました。他のうなぎ屋も続々と真似をして、あっという間に「土用の丑の日にはうなぎ」が定着していきました。
土用の丑の日
立春、立夏、立秋、立冬。その前の18日間を土用といいます。日にちには十二支が割り当てられており、土用のうちに回ってくる丑の日を土用の丑の日と言います。鰻など「う」のつく食べ物を食べると良いとされる「土用の丑の日」は夏だけのイメージですが、実は季節ごとにあるのです(ただし今ではもっぱら夏の土用を指しています)。
この習慣は、栄養価の高いうなぎを食べることで夏の暑さを乗り切るという実用的な側面と、日本の伝統的な暦や風習を大切にする文化的な側面の両方を持っています。
その他(お中元)
夏のご挨拶であるお中元は、道教の年中行事である「中元」が起源です。これに日本の先祖供養の風習が融合し、親類縁者などへお供え物を配る習慣ができたと言われます。その後、江戸時代に感謝の気持ちを込めた贈りものをする風習へと変化。現在では上半期の区切りにお世話になった方へ贈りものをする習慣として定着しました。
お中元を贈る時期は地方によってずれがあります。本来、首都圏では7月上旬から15日ごろまでに贈っていましたが、最近では6月下旬から7月15日ごろまでに贈ることが一般的になっています。
お中元の習慣は、日本の「義理」の文化を象徴するものの一つとも言えますが、近年ではその在り方も変化しつつあります。形式的な贈答よりも、真心のこもった感謝の表現を重視する傾向が強まっており、地域の特産品や体験型のギフトなど、贈り物の内容も多様化しています。
二十四節気と七十二候
7月の二十四節気と七十二候をご紹介します。 二十四節気とは半月ごとの季節の変化を表す区切りの日 、 そしてさらに、二十四節気を5日おきに分けて気象の動きや動植物の変化を知らせる短文のことを七十二候(しちじゅうにこう)と言います。
どれも季節を感じられる言葉なのでぜひ覚えてみてください。
二十四節気
小暑(しょうしょ) 7月7日頃
梅雨明けが近づき、本格的な暑さが始まるとされる時期。小暑の頃には夏の暑さを感じられるようになってきます。次の節気である大暑と合わせて暑中とも言い、この間に暑中見舞いを出します。
大暑(たいしょ) 7月23日頃
本格的な夏を迎え、一年で最も暑いとされる時期、大暑。夏バテ防止のために鰻を食べる土用の丑の日として盛り上がるのはこの頃です。
七十二候
半夏生 ( はんげしょうず ) 7月1日頃
半夏とは烏柄杓(からすびじゃく)という薬草の漢名からきています。半夏が生えるころであることから半夏生(はんげしょうず)。また、半夏生(はんげしょう)の名をもつ草の葉が白く染まる頃です。
関西では豊作を祈ってタコを食べる習慣があります。
温風至 (あつかぜいたる ) 7月7日頃
温風(あつかぜ)とは梅雨明けの頃に吹く南風のことを指します。湿った空気が山を越え、乾いた温かい風が吹くフェーン現象のこととも言われています。 雲の間から注ぐ陽がだんだんと強くなり、気温が一気に上がる時期でもあります。
蓮始開 ( はすはじめてひらく ) 7月12日頃
蓮の花が咲き始める頃。 水底から茎を伸ばし、水面に葉を浮かべ、綺麗な花を咲かせる蓮は、お釈迦様にゆかりのある有り難い花でもあります。梅雨明けも間近な頃です。
鷹乃学習 ( たかすなわちたくしゅうす ) 7月17日頃
鷹のヒナが巣立ちの準備をする頃。5~6月に孵化したヒナは独り立ちができるよう、飛び方や獲物の捕り方を覚えます。
桐始結花 ( きりはじめてはなをむすぶ ) 7月23日頃
桐が花を咲かせる頃。 桐は初夏に薄紫色の花を咲かせ、 盛夏を迎える頃に卵形の実を結びます。
土潤溽暑 ( つちうるおうてむしあつし ) 7月28日頃
熱気がまとわりつくような蒸し暑い頃。 強い陽気を受けた土が熱を発することやその熱のことを「土熱れ (つちいきれ)」と言ったりしますが、その言葉もこの時期の蒸し暑さを体現している言葉だと言えるでしょう。
これらの二十四節気と七十二候は、日本の四季の移ろいを細やかに表現しています。現代の生活では気づきにくい自然の変化も、これらの言葉を知ることで、より意識的に感じ取ることができますね。例えば、蓮の花が咲き始めるのを見かけたら、梅雨明けが近いことを感じ取ったりすることができるようになります。
7月の旬なもの
7月は瓜系の野菜が旬となります。旬の食べ物は美味しいだけでなく体調を整えるのにも良いのでたくさん食べましょう。
旬の野菜
なす、オクラ、スイートコーン、枝豆、じゅんさい、しそ、にんにく、新生姜、みょうが、ししとう、ズッキーニ、ゴーヤ、さやいんげん、きゅうりなど
これらの野菜は、夏の暑さを乗り切るのに適した栄養素を多く含んでいます。例えば、なすやきゅうりには体を冷やす効果があり、ゴーヤには疲労回復を助けるビタミンCが豊富です。また、枝豆やスイートコーンは夏バテ防止に効果的なビタミンB1を含んでいます。
旬の果物
あんず、梅、さくらんぼ、すいか、パイナップル、もも、メロンなど
夏の果物は水分が多く、体を冷やす効果があります。特にすいかは、体内の水分バランスを整えるカリウムが豊富で、夏バテ予防に最適です。また、ビタミンCが豊富なメロンは、暑さによる疲労回復を助けます。
旬の海産物
あじ、あなご、うなぎ、はも、かじきまぐろ、キス、あわび、ほや、うに、さざえなど
夏の海産物は、高タンパクで栄養価が高いものが多いのが特徴です。特にうなぎは、ビタミンAやビタミンB群が豊富で、夏バテ防止に効果的です。また、あじやかじきまぐろなどの青魚は、DHAやEPAを多く含み、脳の働きを活性化させる効果があります。
これらの旬の食材を取り入れることで、夏を健康に過ごすことができるだけでなく、日本の季節の移り変わりを味わうこともできます。また、地産地消を心がけることで、環境への負荷を減らすことにもつながります。
まとめ
7月の和名「文月」の由来から、節気や旬のモノまで、日本の夏の風物詩をご紹介しました。梅雨が終わり暑さが本格化していく季節ですが、これらの知識を活かすことで、より豊かな夏の過ごし方ができるでしょう。
例えば、七夕には短冊に願い事を書くだけでなく、その由来を考えながら自己啓発の機会としてみるのも良いでしょう。また、二十四節気や七十二候を意識することで、日々の生活の中で季節の変化をより深く感じ取ることができます。
旬の食材を取り入れることは、健康維持だけでなく、日本の食文化を守り継ぐことにもつながります。地域の特産品を探してみるのも、新たな発見があるかもしれません。
日本の伝統的な季節感は、現代の生活にも十分に活かすことができます。日焼けや熱中症には十分気をつけながらも、この豊かな文化を楽しみ、充実した夏をお過ごしください。「文月」という和名が持つ意味を胸に、文字通り「文化」を楽しむ夏にしてみてはいかがでしょうか。